歯周病治療の流れ

(1)診査

 

◆問診

歯周病は全身疾患との関わりや、常用薬による影響があることがあります。現在の健康状態についてもお話を伺います。

 

尚、歯周病の一部は遺伝的な因子によるものもあり、ご両親やご兄弟の歯の状態も重要な情報となります。

また、現在のブラッシングの習慣についてのお話も伺います。

 

◆口腔内写真撮影

初診時のお口の状態を写真で保存し治療経過の説明や、治癒の状態を確認するのに使用します。

 

◆レントゲン撮影

歯周病の進行の程度は、同じお口の中でも歯によってかなり差があります。

一本一本異なる進行の程度を正確に診断するために、お口全体の歯のレントゲン写真(パノラマX線、各歯デンタルX線)を撮影して周囲の骨の量や質を診断します。

 

◆ポケットの深さの診査p_004.jpg

歯周病は、同じ歯でも歯の頬側、舌側、前の歯側、奥歯側で進行の程度が異なります。

 

それそれの場所での進行の度合いを知るために、歯と歯ぐきの境目の溝の深さを測る、ポケット診査という検査をします。一本の歯について、4ヶ所から6ヶ所のポケットの深さを計測し、、計測時に出p_008.jpg血するかどうかをチェック

します。

 

 

 

 

 

ポケットは3mm以下で出血がないときは健康であると判断

します。

 

 

ごく軽い力で『プローブ』と呼ばれる器具を歯周ポケットに挿入します。

深さを測ったり、歯や歯ぐきの内側を触って状態を確認します。

歯周ポケットの深さや出血などから歯周病の進行程度や炎症の有無がわかります。

   出血しない                          出血する

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     健康              炎症あり 

 

また、奥歯では後述する分岐部病変の有無と程度を診断し、それぞれチャートに記録します。

*分岐部病変

奥歯では図のように、歯の根が複数に分かれている歯があります。

このような歯で歯周病が進行して骨が減ると、根の分かれ目の複雑な形をした部分が歯ぐきの中に露出してしまいます。

 

このような病変を分岐部病変と呼びます。

この部分は細菌がたまり易くなるだけでなく、複雑な処置が必要となります。

そのため、他の部位とは別に骨の吸収の状態により1度、2度、3度の3つに分類しています。

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初期の分岐部病変。    中程度の根分岐部病変。  高度の根分岐部病変。

水平な骨欠損が歯の   水平的な骨欠損が歯の    反対側と交通している。

1/3以内。          1/3以上。ただし、反対側

                までは達していない。

 

◆動揺度検査

歯がどの程度揺れてしまうか、ゆれの度合いを検査します。

歯をピンセットなどで押さえ前後左右に揺らしてゆれの度合いを見ます。水平方向へ0.2mmから1mmの揺れを1度、1mmを越えるものを2度、上から指で押して縦に沈み込むように揺れてしまうものを3度、と表します。

 

特に3度の歯は重症で、治療は不可能なのでほとんどが抜歯の適応となります。

 

(2)診断、治療計画

以上の診査の結果は診断用のチャートに記入され、治療方法の選択や回復の程度を診断することに使用されます。

 

これらの診断結果を統合して、一本一本の歯について予後の評価をし、以下の3つのカテゴリーに分類します。

ここで2に分類された歯は、治療に対する反応を見ながら、後で再度評価をして最終的にはどの歯も1または3のどちらかに分類されることになります。

 

      1 Extraction    :要抜歯歯(診断の時点で絶対に抜かなければならない歯)

      2 Questionable :治療経過によっては抜かないで済むかもしれない歯

      3 Remained      :完全に残すことのできる歯

 

(3)治療

 

初期治療

初期治療とは、原因除去治療とも言われ、字のとおり、炎症の起きる原因を除去する治療法のことです。

 

 1.   プラークコントロール、歯肉縁上歯石の除去

基本的なブラッシングの方法や、歯ブラシの選び方、補助的な清掃用具の使い方等を覚えて頂きます。

歯周病はほとんどの場合、歯と歯の間の磨きにくいところが進行しています。

 

よってその部分をキレイにできるかどうかが大きなポイントになります。

 

治療のスタートは歯ぐきの上に見える部分のクリーニングから始めます。

傷んだ歯肉や歯の表面を傷つけないように、ポケットの浅い部分のプラークや歯石を、無理をせず簡単に除去できるものから除去します。

 

細菌ではほとんどの場合、この処置には超音波の振動を利用した超音波スケーラーという器械が用いられます。

この処置は2〜3回で終わります。

 

 

 

 2.     再評価、SRP

初診からおおむね一ヶ月後ブラッシングによる歯肉の引き締まりを待って、再度ポケット検査をします。検査の結果に基づいて、初めに決定された治療計画の変更が必要かどうか、再度検討します。

 歯周病が軽度の部位は、ほとんどの場合ここまでの治療で治りますが、以降も定期的にメンテナンスを受けていなければ再発の危険があります。

 

この時点で、深いポケットがあり、出血も認められる部位次のステップへ、治療を進めていきます。

 

次の治療は保健用語でSRP(スケーリングルートプレーニング)と呼ばれています。この処置はポケット内部の歯根表面についた歯石や細菌性の汚染物質を、徹底的に取り除く治療です。

 

現在ではこの処置を、歯根面のデブライドメントと呼んでいます。

この処置はポケットの深い部分をさわりますので、麻酔を必要とする場合もあります。この治療は、以前はキュレットと呼ばれる手用の器具でガリガリ削って、根の表面をつるつるになるまでキレイにしましたが

 

現在では、根の表面のセメント質という、歯周組織の再生にとても大切な生きた細胞を傷つけないように、、特別なチップをつけた超音波スケーラーを使用する方法に変わってきています。

これは、歯の表面の非常に薄い組織であるセメント質の重要性がわかってきたことと、細菌性の汚物が歯に付着している強さは非常に弱く、簡単に剥がれてくることがわかったことによります。

 

キュレットによる方法では、術者の技量の差が治療効果を大きく左右してしまうことや、セメント質を余計に削り取ってしまい、根の細菌がたまり易い傷を作ってしまうこともあります。

 

なお、スウェーデンでの研究によりますと、この超音波スケーラーも歯根表面が傷つかないよう特別に開発されたタイプのものでないと根の表面を傷つけてしまうというデータが出ています。

 

なおこの処置は健康保険治療の範囲で行う場合には、お口の中を6つのブロックに分けて1ブロックずつ処置をしなければならないので、すべての歯をきれいにする必要がある場合には最低6回の来院が必要となります。

 

  3.      再評価

処置の終了から歯肉の治癒期間を考慮して、再度ポケットの深さ、出血の有無を検査します。

初期から中等度の歯周病はほとんどがここまでの処置で治すことができます。歯肉が完全に治ったのを確認できたら、ここで初めて、かぶせ物を製作する補綴処理という段階に入ることができます。

 

この時点では、歯ぐきの位置は歯周病が治癒し歯ぐきが引き締まったために、初診時の位置よりも下がって見えます。

今まで見えなかった、かぶせ物と歯ぐきのラインも見えてきます。

 

これ以前に最終的なかぶせ物を作ってしまうと、このかぶせ物と歯ぐきの境目の位置を適切に作ることができず、あとで見た目が悪くなってしまったり、清掃性が悪く、歯肉の炎症を起こしやすいかぶせ物になってしまいます。

 

 4.      歯周外科処置

ここまでの治療が終わっても6mm以上のポケットがある部位では、骨の形態をととのえて、外科的にポケットを浅くする手術が必要になります。

 

最も一般的に行われる手術は歯肉隔離掻爬術(FOP)と呼ばれる手術です。

 

簡単に言うと、これは歯ぐきを開いて根の表面を直接見て汚染物質を完全に取り除くとともに、ポケットを浅くする手術です。この手術は、外科的に歯ぐきの位置を見てポケットを浅くするので、術後、約2mmくらい歯ぐきが下がります。

 

このため、術後は歯と歯のすき間も大きくなり、歯が長くなったように見えてしまうので、審美性の改善のために後でかぶせ物などで形態を整える等の処置が必要になってきます。

また、このような手術では術前術後のプラークコントロールがとても重要で、十分なプラークコントロールが出来ていない状態での手術はかえって歯周病が悪化してしまいます。

 

また、術後も早期にブラッシングを開始して、徹底的なプラークコントロールを続けていかないと良い結果が出ません。

 

 

⇒再生療法

  歯科外科手術時に同時に行われる、歯周病で減ってしまった歯の周りの骨を人工的に再

  生させよう という治療法です。現在行われている再生療法は、ゴアテックスの膜を用いた

  GTR法と呼ばれるものエムドゲインというジェル状の物質を用いるものの2種類があり

  ます。

 

  →GTR法

  GTR法は手術時にゴアテックスの特殊な膜を歯ぐきの中に埋め込み、骨を再生させる方

  法です。 かなりの量の骨を増やすことができる半面、手技が複雑な上、数ヵ月後再手術

  をして膜を取り出さな ければならないという難点があります。

  ただし最近では一定期間経つと吸収されてなくなってしまう膜も出てきています。

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通常の歯周外科処置後の歯肉の治り        再生療法を行ったときの歯肉の治り方

方です。歯肉が下がり、歯の弱い部分       です。術後歯肉の下がりはほとんど無い

が歯ぐきの上に露出してしまっていま        ので、審美的にも優れています。

す。ほとんどの場合根を支えている骨        また、歯根を支える骨が時間をかけて再

の量は減ってしまったままです。           生されていきます。

 

 →エムドゲイン

 エムドゲインはスウェーデンのビオラ社で開発された、子豚の歯胚(歯ができるもとに

 なる細胞)から 抽出した物質で、アメロジェニンという、もともと歯とその周囲の骨が作

 られる際に重要な働きをするものであり、骨の再生を促してくれる物質です。

 

 手術時にこの液体を骨と歯とのすき間の部分に流し込むだけの比較的単純な手技で

 す。今のところ 骨を増やせる量は限られています。

エムドゲインについては、神谷デンタルオフィスの衛生士がスタッフブログでも紹介しています!

ぜひご覧ください! 神谷デンタルオフィス スタッフBLOG

※いずれも健康保険適応外の治療となります。

 

◆補綴処理

以上の一連の処理がすべて終了し、歯肉の健康が完全に取り戻せた段階で初めて、冠などの最終的なかぶせ物を作る、補綴処理に入ります。

 

◆メインテナンス

すべての治療が終了したときが新たなスタートになります。歯周病の再発を防ぐためには定期的なメインテナンスが不可欠です。

 

初めは1ヶ月ごと、次は2ヶ月ごとというように、徐々にメインテナンスの期間をあけていき、最終的には3ヶ月から4ヶ月に1回程度のメインテナンスを一生続けていかなければなりません。